以前からDvorak配列やTypeMatrixキーボードを使ってきた宮本隊長にとって、一般的なキーボードはどう見ても使いにくい、非合理的なものでした。特に次の点はなんとかしたいことでした。
QWERTY配列は日本語には合わない。
各行が横にずれているのは指の動きに合わない。
エンターやバックスペースが遠い場所にあるのはおかしい。
小指を酷使するキー配列は指を痛めるのでやめてほしい。
キーボードでの文字の配列を決めるときには、文字の出現頻度、ヒートマップなどを使って文字配列の最適化、入力高速化を目指す方法があります。
これは否定できない方法ではあるのですが、何かが見落とされているように思えてならない、というのが宮本隊長の疑問だったのでした。
宮本隊長は20年以上Dvorak配列を使っていました(つまり20世紀のころからである)。
最近になって(自作キーボードが広がるにつれ)キー配置を自由に設定できる仕組みが現れ、Dvorak配列のカスタマイズを繰り返していきました。その結果生まれたのがLEIA配列です。元がDvorak配列とはわからないものになりました。
LEIA配列では小指をなるべく使わないようにしています。
昔、QWERTY配列を使っていた頃、キーボードを使いすぎて小指がつったことがありました。Dvorak配列を使うようになったのはそのためです。
LEIA配列ではさらに徹底して、エンターやバックスペースなどは親指担当にしています(これはTypeMatrixキーボードに由来)。
近年、独自デザインの自作キーボードが続々登場していますが、相変わらず小指を酷使するキー配置ばかりなのは不思議です。
小指をなるべく使わないように文字を並べると、左右それぞれ3×3に収まることがわかりました。これはキー配置の覚えやすさにもつながることです。
親指が担当するのは、スペース、タブ、エンター、バックスペースです。
タブはかな漢字変換の予測変換として使います。予測変換を利用しないなら他の機能を割り当てていいでしょうし、使わなくてもいいでしょう。
左手右手の指でキーを同時押しする入力方式は多くありますが、これを難しいと感じる人は多いのではないかと宮本隊長は思います。まあ、宮本隊長本人がそう感じているということですが。
また、親指シフトでは親指が忙しくなり過ぎています。親指はそんなに器用ではない、というのが宮本隊長の見立てです。
LEIA配列では最初から同時押しを想定していたわけではありません。
基本的なキー配置が決まった後、M式の入力方法を取り入れようとしたのがきっかけです。
※M式=森田正典により考案された日本語入力方式。
最初は親指に「左シフト」「右シフト」を割り当ててみたのですが、どうも使いにくいのです。親指+別の指という組み合わせは難しいと感じました。また、専用のシフトキーが増えてしまうのもレイアウト上、困ったことでした。
ではどのような同時押しなら難しくないか、いろいろ試してみました。
片方の手だけで、左右に隣り合う2つのキーの同時押しなら難しくない、ということは試せばすぐにわかりました。
キーの組み合わせは何でもよいのではなく、LEIA3配列でのようなものに限られることがわかりました。図以外の組み合わせは難しいです。例えばLEIA3配列で「NS」の同時押しは不可能です。
LEIA3配列での同時押しは格子配列に向いています。
横ずれ配列にはまったく不向きです。
縦ずれ配列では、ずれが大きいほど不向きです。Ergodox程度のずれなら大丈夫です。
同時押しはQMK Firmwareのcomboで簡単に実現できます。
3キー以上の同時押しも可能ですが、組み合わせを覚えるだけで大変になりそうなので勧められません。
上下のキーの同時押しは不可能ではありませんが、ほとんどのキーキャップ形状では難しいでしょう。
LEIA3配列でも設定はしていますが無理に使うほどでもありません。
私も初めは上下のキーの同時押しは不可能と思っていましたが、そうではないことを教えてくれたのがステノタイプ(stenotype、stenography)です。
ステノタイプは英語の速記タイプライターで、特殊な形状、同時押しを多用する特殊な入力方法を採用しています。詳しくはOpen Steno Projectなどをご覧ください。
ステノタイプでは上下のキーの同時押しは普通です。1本の指で、上下に並んだ2つのキーを同時に押します。
ただ、そのために一般のキーボードで使用する場合はキーキャップの間隔の隙間を狭くすることが推奨されています。(当然ながらオーソリニア推奨です。)
実際には間隔が狭いキーキャップはほとんどなく、上下のキーの同時押しは使うべきかどうか悩ましいものがあります。
(上下のキーの同時押しはLEIA4配列でさらに追求していくことになります。)
ステノタイプはピアノなどの楽器鍵盤(つまりキーボード)を思わせる外見です。というか、楽器キーボードの方が歴史は古いのです。初期の文字鍵盤にはピアノと同じく2段鍵盤もあったようです。
ステノタイプは多数のキーを同時押ししますが、これも楽器の演奏のようです。1キー1キー押していくよりも、多数同時押しの方が正しいのでは?と思ってしまいますが、それだと習熟が大変になってしまいます。ここはバランスが必要です。
同時押しをするにはキースイッチは軽い方がいいのですが、軽すぎるのも誤入力につながりやすそうに感じました。
50g前後がお勧めでしょうか。
minipeg48キーボードではKailh Choc v1 Red Proを使いましたが、35gというのは軽過ぎでした。その後、Kailh Choc v1 Brown(60g)に変更しました。
ステノタイプではとにかく軽いスイッチが好まれるようですが、それは同時に7キーぐらい普通に押すからです。 LEIA3配列では同時押しは2キーまでですから、そこまで軽い必要はありません。
撥音、二重母音はM式に由来しています。
撥音、二重母音は漢語(漢字の音読み)に効果的です。実際に文章を書いていると実感できます。
ai、ei、ouは出現頻度がかなり高いです。
実際に文字入力をすると、youは意外と出現する文字並びです。youほどではありませんがyuuもよく出てきます。you、yuuの出現頻度は見落とされているように思います。
普通の「やゆよ」というよりも「ゃゅょ」のために設定しました。
「ye」「yunn」などもあった方が便利なので後から追加しました。
日本語ではyは子音だとされていますが、実際には母音の役割も兼ねていると考えるべきでしょう。そうするとyを他の母音と同じ左側に配置するのは悪くない選択でした。
ここまで、同時押しは左手側だけでした。右手側にも設定したくなります。
助詞は日本語文中に必ず現れます。助詞は文節の区切りにもなるため、同時押し1回で入力することで打鍵のリズムがとりやすくなると考えました。
出現頻度を調べたり、実際に打鍵してみて「を、が、は、と、の、に、で、も」の10個があれば十分と判断しました。
文体によっては「だ」(助動詞)も有効ですが、宮本隊長の文体は「です・ます」なのでほぼ使いません。
助詞ではありませんが、「ん」「っ」も設定しなければ使いものになりません。「ん」は大半が撥音になるため使う機会はあまりありませんが。
AZIKの「特殊拡張」が由来です。
略語はかな漢字変換のローマ字ルールでも同じことができます。その場合は使用するパソコン毎に設定をしなければなりません。これは面倒。また、スマホではローマ字ルールの設定ができません。
宮本隊長は、QMK Firmwareでプログラムすれば略語がキーボード側で設定できることに気づきました。キーボード側にこのアルゴリズムを組み込めば、OSに依存せず略語が使えるようになります。
どの語を選ぶかは個人の文体にも左右されます。宮本隊長は「ですます体」が基本なので、そのバリエーションが多くなっています。
文末の語を略語で入力するとリズム良く入力できます。これは実感しやすいと思います。
よく使う語を略語に設定するのも効率的です。
「がつ月」「にち日」「ふん分」「しき式」「はし橋」「みなみ南」などは宮本隊長が個人的に必要としている語です。
略語は個人個人で必要な語が違ってくると思います。宮本隊長は「ですます」体なので、それに合わせた略語が最適となります。
ですが、文末が「ですます」ではない場合、例えば「ざます」「ござる」「おじゃる」「やんす」「DEATH」「にゃん」などの場合はそれに応じた略語を設定すべきにゃん。そうすると略語を簡単に設定できるツールが欲しくなるにゃん。だけど今のところはソースコードから書き直さないといけにゃいのだ。同時押しも略語も、簡単に設定できるツールが欲しいにゃ~。
必要な略語は個人によって違うということは、LEIA配列の略語は絶対のものではないということです。使う人がカスタマイズできる、そういうキー配列もありだと思います。
宮本隊長のように「ですます」体だけですむならまだいいのですが、小説中の話し言葉のように多種多様な文体が出てくる場合はLEIA配列の略語は十分対応できないような気がします。LEIA配列はビジネス向け、論文向けなのかもしれません。
キー配列はさまざまなものが作られており、それを数値で評価する方法もあります。
ですが、同時押しと略語を多用するLEIA3配列は従来の評価方法は意味がない…まったく別のパラダイムで評価しなければならないと思います。
いや、略語の設定が個人毎に違うならば、汎用的な評価方法は無い、と言えるのかもしれません。
キー配列は個々人が自分に合わせてカスタマイズするもの、というのが普通になる日が来てほしいなあ、と宮本隊長は希望します。
同時押しと略語は、最初は自宅のMacでKarabiner-Elementsで実装していました。ですがこれではWindowsやスマホでは使えません。
キーボード側に実装すればWindows、スマホでも同等に使えるはず。ここからQMK firmwareに手を出すことになりました。
QMK firmwareを使わない場合、MacならKarabiner-Elementsで同等のことができます。
Windowsなら紅皿で同時押しを設定できます。略語はかな漢字変換のローマ字ルールで設定できます。
スマホなら…どうにもできない! やはりQMK firmwareは必須となるのです。
参考までに。
パソコンはMac。
それにParallels Desktopを載せ、それにUbuntuを載せ、QMKをインストールしています。
仮想マシンのファイルサイズは20GBぐらい。
仮想マシンなら複数のQMKバージョンを運用することも可能かと思ってます。
ソースファイルはMac側に置いています。ソースファイルのリンクファイルをUbuntu側に置いています。
ソースファイルの編集は使い慣れたMacでできます。
Ubuntuではコンパイル(make)をするだけです。
Ubuntuでの操作は最低限ですむので楽です。
これで完成と思いきや、この後はLEIA4配列へと進んで行くのでした。LEIA4配列では基本キー配列を少し変更。同時押しを大幅変更しました。そして、片手キーボードとの統合…。
試行錯誤がまとまったらまた公開します。